2012/11/11

Norah Jones Japan Tour 2012 @日本武道館 2012/11/9




ニューヨーク生まれ、テキサス育ち、現在33歳。名門ジャズ・レーベル、BLUE NOTEからリリースした1stアルバム『Come Away With Me』が全世界で大ヒット。第45回のグラミー賞では主要4部門を含む8部門全てで受賞した、世界の歌姫ーNorah Jonesーの来日公演を日本武道館で観てきた。


 2002年9月の初来日、2005年5月の2度目の来日に続き、7年ぶりとなる3度目の来日公演。今回もチケットはほぼ即完売したとのこと。


 会場に駆けつけた満員の観客は、クラブ/Hip Hop系のイベントにいそうなストリート系の若い男性から、Norahと同世代の30代女性、カップル、50代前後のジャズを聴いていそうな男性、老夫婦と、年齢層は本当に幅広く、彼女がいかにジャンルの壁を越えて多くの音楽リスナーに愛されているのかを実感する。全体的にはやはりNorahと同世代の女性の姿が一番目立った。仕事帰りに、一人で観に来ている感じの女性の姿も多かったのが印象的だった。


 公演概要には前座の名前が挙がっていなかったので、前座なしで19時からスタートするもだと思っていたけれど、男性ミュージシャン4人がステージに登場し、ブルース/カントリー調のインスト楽曲を数曲披露。後から調べて知ったのだけれど、このバンドはノラ・ジョーンズが参加するバンド、The Little Williesのギタリスト、JimCampilongoのバンドだということだった。JimCampilongo名義でCDもリリースしていて、このバンド形式でもブルース〜カントリー調の楽曲を深みのある音で演奏していて、渋かった。


 この前座のバンドの演奏が30分ほどあり、その後休憩を挟んで、20時頃からNorah Jonesのライブがスタート。ステージ上には折り鶴が天井から吊り下げられていて、真っ暗の中、パープルのライトがその折り鶴を照らす。日本武道館とは思えない、まるでどこかの小さなライブハウスのような雰囲気のあるステージを演出していた。


 1曲目はデビューアルバムからの『Cold Cold Heart』。CDで聴くのと寸分違わない、あの歌声が武道館に響き渡る。1曲目を聴くだけで、本当に来て良かったと、早くも私の心は満たされていた。

 続く2ndアルバムに収録されている『What am I to you? 』では、大きくアレンジを変えての演奏。そして、この後からは最新アルバムを中心とした流れとなり、ダークな『Little Broken Hearts』、『Say Goodbye』、『After the Fall』といった曲が続く。失恋を歌った曲からは、ノラのプライベートも垣間見える。

 彼女は曲により、キーボードとギターを替えて自在に演奏し、その唯一無二の歌声だけではない多彩さを観客に印象づける。

 ブルージーな『It's Gonna Be』、ムーディーなバラードの『Rosie's Lullaby』では、これでもかというぐらい大人の女性の魅力を見せてくれた。

 
 演奏の合間には観客から『I Love You』といった声が次々と掛けられ、その一つ一つに彼女は応えていた。こういうところも彼女が幅広く愛される要因なんだろうなと感じた。大スターなんだけれど、決して飾らないし、お高く止まってもいない。


 途中には最新作をプロデュースしたDanger Mouseのアルバムに参加した際の楽曲『Black』も披露。


 しかし、この日、彼女の魅力を何よりも堪能できたのは、シンプルなピアノソロで演奏した『Painter Song』。スポットライトに照らされたピアノの前に座り、軽快にピアノの鍵盤を弾きだす。ピアノとNorahの歌声のみが、静まりかえる武道館の中に響き渡る。シンプルでミニマルな美しさに鳥肌が立つ。ゴージャズではない贅沢さ。

 実際にはステージは遥か遠くにあるのだけれど、彼女の息継ぎまでも感じられ、まるで小さなライブハウスで目の前で歌っているかのように、彼女を身近に感じられた。息を飲んでただただ彼女の歌声の一つ一つをじっくりと堪能する。

 ロック寄りのアプローチも彼女の新たな魅力を浮き出させるけれど、やはり彼女の魅力はこういう正当派のジャズ寄りの楽曲なのだと、会場にいる誰もが改めて感じたのではないかな。シンプルなほど、素材の良さが引き立つ。


 そして、そこから彼女が『Don't Know Why』のイントロをピアノで弾き出すと、会場から大きな歓声と拍手が起きる。CDに収録されているバージョンとは異なるアレンジで、スローテンポでしっとりと歌いあげた。オリジナルバージョンも聴きたかったという思いもあるけれど、この曲を生で聴けただけで大満足だった。


 ラストのパートでは美しい壮大なバラード『Miriam』、そして最新作からはベースが印象的なビートの効いた『Happy Pills』も披露。この『Happy Pills』は非常にライブ映えする楽曲だと感じた。


 ジャズの枠にはまらず、作品ごとに大きくアプローチを変えて様々なチャレンジを試みている彼女の姿勢を改めて感じられるステージだった。デビュー作と2ndアルバムでジャズ・ボーカリストとして不動の地位を築きながらも、新たなフィールドに出て行く潔さとチャーミングさこそが、実は彼女の魅力の源なのかもしれない。

 本篇最後の『Lonestar』では、ほっこりする温かさと幸福感で会場を包みこんだ。


 本篇だけでも予想以上のボリューム だったけれど、アンコールにも応えて再びステージに登場してくれた。アンコールでは、『Sunrise』、『Creepin' In』をアコースティックギターで披露し、観客はそれに手拍子で応答。会場中がリラックスしたイージーなムードに包まれた。そして、締めくくりは『Come Away With Me』。

 代表曲はほぼ網羅し、最新作からの楽曲とバランスをとった構成で、大方のファンは大満足だったと思う。

 
 様々なジャンルを行き来するNorahの歌声を聴きながら、いろんなアーティストとのコラボを頭の中で妄想してみた。これからもいろんなアプローチであっと驚かせてくれることに期待したい。








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