2013/02/11

LAMA 『Modanica』Tour  2013/2/2 渋谷WWW


電子音楽とバンド・サウンドの共存の新しいかたち。


LAMAはそれぞれ別のバンドやソロで活動してるアーティストの集合体であり、ややもすれば、「お遊び的なバンド」と捉えてる人も多いかもしれない。実際に、2ndアルバムの制作に入るときには周囲から「まだ続いてるの?」といったことを言われたとメンバーは話してる。

けれど、2012年12月にリリースされた2ndアルバムを聴けば、LAMAの本気さが伝わってくる。ポップな楽曲が非常に目立った1stアルバムから、2ndアルバムではさらに実験的な試みに取り組んでいて、ミニマル・テクノまで取り入れている意欲作となっている。

その2ndアルバムの楽曲を披露するツアーの東京公演。LAMAとしては初の単独公演であり、渋谷WWWのチケットはソールドアウト。ライブは2ndアルバム中心ではあるものの、1stアルバムの楽曲もバランスよく配置された内容だった。


LAMAは楽曲の制作プロセス自体がこれまでのバンドの概念を覆す。1stアルバムでは、メンバーのうち一人が作った曲をベースにネット上のサーバーなどでやり取りをし、各メンバーがアイディアを加えていくという手法を取った。続く2ndアルバムでは男性陣がフレーズのループを作り、そのループに他のメンバーがメロディや生楽器、リズムを加えて楽曲として完成させていくというやり方が採用されている。

誰か一人が主導するのではなく、各メンバーが平等に自分たちのアイディアを出し、自身のオリジナリティを表現している。これこそが、他のバンドやソロで活動するメンバーが集まったバンドゆえの強みであり、おもしろみ。

ナカコーとミキちゃんの陰陽のコントラストが印象的なツイン・ヴォーカル、ひさ子ちゃんの情緒的なリード・ギター、電気グルーヴのエンジニアとしても活動する牛尾くんのマニアックで細やかな音処理のテクニック。メンバーそれぞれに必然性があり、このメンバーだからこそLAMAは成り立っている。そのことを改めて認識させられるライブだった。


LAMAの楽曲は3分前後の明るい曲調のポップスが多いイメージがあるけれど、『In The Darkness』や『Blind Mind』ではナカコーのソロ・プロジェクトであるiLLに通じるダークサイドの要素も見せ、多様なメンバーそれぞれのバックグラウンドがLAMAというバンドに反映されていることを印象付けた。ミニマル・テクノを取り入れた『Domino』から『In The Darkness』、そして『Blind Mind』の流れは、電子音楽と生バンドの共存のあり方という意味において、この日のライブの中で重要なポイントだと感じた。

『Domino』はLAMAの楽曲の中でも特に電子音楽寄りであり、ライブで実際に演奏したことにも驚いたが、この曲がライブの流れの節目となり、重要な役割を果たしていた。『In The Darkness』も『Blind Mind』も、ディープな嗜好を持つナカコーと牛尾くんが作ったクールな電子音楽がベースになっているけれど、そこにひさ子ちゃんの叙情的なギターのリフが重なることで楽曲全体が熱を帯びる。『Blind Mind』は、ナカコーの艶と憂いを秘めたヴォーカルの魅力が最も表れている曲でもあり、ひさ子ちゃんのギターリフとナカコーの感情的なヴォーカルが互いに反応し合う形となり、会場全体も熱気に包まれた。この日のハイライトの一つだった。


後半で披露した『D.B.A』のイントロでは、打ち込み音の音量が最大になり、強烈なライトが点滅する演出で、その様子はクラブイベントそのものだった。この日のライブは19時スタートだったけれど、エレグラのようなオールナイト・イベントに来ているかのような感覚に陥った。ちなみに、この日のVJや演出は注目を集める映像作家の細金卓矢氏が担当していたとのこと。


その後に披露した『Parallel Sign』から『Know Your Lights』の流れは、ファンの期待に真正面から応えるもので、熱気を最高に上げてからの、物語のエンディングを感じさせる『Life』への流れがとても美しかった。『Life』はモコモコとした不思議な音のテクスチャーが背景に横たわっている楽曲で、ステージを照らすドットのライトがその音のテクスチャーを視覚化していた。ここでもひさ子ちゃんの感情に訴えかけてくるギターのリフがこの楽曲のキーとなっていた。


アンコールはなんと2回。2回目のアンコールで披露した『Cupid』は、そのピュアな初々しさ、フレッシュさを感じさせる点でLAMAの楽曲の中でも群を抜いていて、ポップソングとして珠玉のナンバーであることを改めて実感。

マニアックな電子音楽がベースにありながらも、あくまでも最終的には幅広いリスナーに届くポップソングとして奏でることを目指す。『Cupid』からは、そうしたLAMAの基本姿勢が伝わってきた。

アンコールラストの『Dreamin'』では、メンバーそれぞれが楽器にエフェクトをかけ、実験的なノイズをかき鳴らし続けた。


ポップソングもノイズもエレクトロもやる。そういう柔軟さ、不確定さが、このバンドのおもしろいところで、それはメンバーそれぞれが別の活動場所を持っているからこそ可能なことでもある。そして、LAMAは新しいことを取り入れる実験精神と、ポップスとして仕上げるという姿勢のバランスが絶妙であるからこそ、多くの新たなファンを獲得しているのだろう。

これからは、こういった形を取るプロジェクトやバンドがより一般的な存在になってくるように思う。それぞれが元々持っている自身の強み、独自性を発揮してるのだけれど、LAMAという一つのバンドになったときに、新しいものが生まれる。

このLAMAに触発されて、新しいおもしろいプロジェクトが生まれてくるといい。



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