2010/08/31

ロンドン グラフィックデザイン展 @パルコファクトリー


ロンドンの22組のデザイナーをピックアップし、約30年間のUKグラフィックデザインシーンを振り返る「ロンドン グラフィックデザイン展」に行ってきた。

ロンドン グラフィックデザイン展
http://www.parco-art.com/web/factory/ukok1008/index.php

期間の最終の週末である8/28~8/30は、デザイナー集団TomatoのSimon Taylorが制作したサウンドインスタレーション「Speak Music」が会場内で流されていた。
この「Speak Music」はコンピューターにいくつかのルールを設定することで、人の声から音を創り出すシステムを構築し、今回の参加デザイナーたちのインタビュー音源を音に変換するという、おもしろい試み。

場内には11のボックスがあって、その中に入ると、デザイナーが「Sound」をテーマに制作した新作グラフィックス2点が両側の壁に対面して飾られている。さらに一辺の壁にはiPadがはめ込まれており、デザイナーのインタビュー映像が流れている。

ボックスの外側には、デザイナーの作品を紹介する紙面がコラージュ形式で貼られていた。

最初は今いち、見方が馴染まなくておもしろいと思わなかったのだけれど、進むにつれて要領が掴めてくる。

特に、今回は各々のデザイナーのインタビュー映像が興味深かった。

まず、デザイン事務所の室内でインタビューが行われており、当然のことながらオフィススペース自体が物凄くおしゃれ。
無駄なものがなく、映るもの全てが絵になる。

自分のオフィスはといえば、おしゃれを意識したことない。
やはり、働く場にもデザイン性って物凄く重要な気がした。
文房具を変えるだけでも、気持ちが変わる。


また、今回参加していたデザイナーの多くは、大学やアートスクールを出てすぐにデザイン事務所に入るか、もしくは自ら立ち上げて、若くして大きな仕事を成し遂げていた。
学校入学時には既に強く自分の職業を意識していて、学校で貪欲に学んでいる様子がインタビュー映像から伺えた。
日本でもデザイナーを目指す人や専門的に学んでいる人は、彼らのように学校で貪欲に学んでいる人も多いのかもしれないけれど、自分が大学にいるときを思い返すと自分の職業を意識して授業を受けた記憶はない。

イギリスは言うまでもなく、音楽カルチャーが深く根付いた国。
イギリスのデザインシーンは音楽カルチャーと密接していて、インタビューでも「デザインブックを見るよりレコードスリーブを見る」と話してたり、多くのデザイナーが若い頃からレコードやCDのデザインから大きな影響を受けていた。

さらに興味深かったのが、今回参加していたデザイナーは小規模なスタジオや事務所で活動しているケースが多かったこと。
これまでは大規模な事務所しか大きなクライアントと仕事ができなかったが、ITの発達により「小規模なデザインスタジオでも大手クライアントと仕事ができる」ようになってきているそう。

大きな組織となることを嫌う傾向が強く感じられた。おもしろいと思ったことをすぐに実践するには、小規模で小回りが利くことはとても重要なことのよう。

「おもしろいと感じたら報酬なくても仕事をしてきた」

どんな仕事でも新しいことをやろうとするなら、この姿勢が大切だと改めて感じた。

最後に観たイギリスのグラフィックデザインシーンの大御所、Neville Brodyのインタビューは、一言一言が非常に印象的だった。

70年代半ばのパンク・ムーブメントの初期では、多くのインディーレーベルが現れ、若手無名デザイナーを起用した。そこにはクリエイティブが溢れていた。
けれど、現代はデザインがただの商品に成り下がってしまった。
経済に変化が訪れている2010年はデザインがカルチャーになれるチャンス。
デザインと産業の関係が良くなるかもしれない。

今は実験的な表現を発表する場がないけれど、もしかしたらウェブの世界に可能性があるのかもしれない。


音楽の世界も、デザインの世界も、同じような変化がまさに起こっているよう。

今回は自分の持っているCDやよく知ってるCDのジャケットデザインを手掛けたデザイナーも多く参加していることもあって、普段馴染みのないデザイン展でもとても興味が持てた。


●Intro
OASISやPrimal Screamなど、UKを代表する音楽作品のジャケットを数々手掛けてきたデザインスタジオ。PVも手掛けている。
http://www.introwebsite.com/index2.asp


Primal Scream/XTRMNTR(Intro)




●Neville Brody
70年代から活躍するグラフィックデザイン界の大御所。
http://www.researchstudios.com/neville-brody/

23 Skidoo/Seven Songs

●Tomato
Underworldも所属するクリエイティブ集団

Underworld/Beaucoup Fish


●Tappin Gofton
ColdplayやThe Chemical Brothersなど、音楽関連のデザインを多く手掛ける。

The Chemical Brothers/We Are The Night(Tappin Gofton)


Travis/Boy With No Name(Toppin Gofton)

●EAT SLEEP WORK/PLAY
http://www.eatsleepworkplay.com/


オーストラリアのレーベル、MODULARのレーベルデザイン(EAT SLEEP WORK/PLAY)
●YES
Warp20周年のデザインを手掛けたのはこのデザインスタジオ
http://www.yesstudio.co.uk/view/intro
Warp20(Yes)





●BIG ACTIVE
http://www.bigactive.com/

Beck/Information


●Tom Hingaton Studio
Massive Attack、Gnals Barkley、Royksoppなど多くの音楽作品のデザインを手掛ける。
http://www.hingston.net/
Massive Attack/Heligoland


好きなCDのジャケットデザインを手掛けたデザイナーにまで注目して調べると、より一層その音楽を深く味わえる。
これからはそんな風にいろんな作品に着目するのも楽しみの一つになりそう。



●It's Nice That
おもしろいと感じさせるクリエイティブなものが世界中から集められて紹介されている。
http://www.itsnicethat.com/

設立者は確かまだ24歳と26歳の二人組みだったような。

●Bibliotheque
「ベストなのは説明を必要としないデザイン」
http://www.bibliothequedesign.com/


●Owen Gildersleeve
手作り感がかわいいデザイナー
http://www.owengildersleeve.com/


●STUDIO 8
ロンドンの騒音を数値化して表したデザインがとてもおもしろかった
http://www.studio8design.co.uk/index.htm




ちなみに、先日はHMV渋谷のイベントで、サニーデイ・サービスの「東京」や、くるりの「ばらの花」等、多くのCDジャケットを手掛ける小田島等さんに偶然だけれど直にお会いすることができて嬉しかった。

小田島等さん公式サイト
http://www.odajimahitoshi.com/


歴史的な芸術家の大規模な展覧会もいいけど、現在進行形のアーティストに触れるのはとても刺激的です。

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