2013/02/24

My Bloody Valentine  2013/2/7 新木場 Studio Coast


マイブラのライブは一度体験してみないと、その凄さは絶対にわからない。これは断言できる。

念願の単独来日公演。

チケットは即完売。ヤフオクでは定価の2倍程度の価格でチケットが次々と落札された。

さらに、来日直前に、バンドとして約22年ぶりの新作アルバムとなる『MBV』を自らのオフィシャルサイト限定でリリース。日本のマイブラ・ファンにとっては、マイブラのことで頭がいっぱいになった1週間だった。

個人的には、大学生の頃に『Loveless』を初めて聴き(もちろんリアルタイムではない)、それ以来、ずっと来日を夢見てきた。2008年のフジロックでの来日公演を観ることができなかったことを5年近く後悔し続けていただけに、今回の来日はなんとしてでも観たかった。


会場となった新木場コーストのキャパは約2,400人。客層はリアルタイムで聴いていた世代というよりも、後追い世代の方が多いという印象。リアルタイムで聴いていた世代はもはや40代となっていて、ライブから足が遠のいている人も多いだろう。

入場の際には、メンバーの意向により、耳栓が配られた。ノイズによる鼓膜への影響に配慮した取り計らいだった。




ライブはリハーサルが押していたこともあり、約15分遅れて『I only said』でスタート。いきなり、何度も何度も聴いてきたイントロのフレーズが流れ、会場からも大きな歓声が上がる。

3曲目にはリリースしたばかりの新作『MBV』からの楽曲『new you』を披露。この曲ではメンバーの演奏が合わず、2回演奏が中断され、やり直された。ケヴィンは「(このような中断が)これまで5回あった。これで6回目だ。」といったジョークを言っていた。もちろん、新曲でライブでの演奏回数が少ないということもあるけれど、ライブにおいても完璧を目指すケヴィンの性格が顕著に出ていた。

マイブラのライブは初めて観たけれど、レコーディングで表現されているあの複雑かつ繊細なサウンドが、こうしてライブで再現されていることが 驚嘆に値する。

さらに言うと、CD等の録音物では聴き取れなかったサウンドをこの日のライブで初めて聴き取ることができた。根本的に、レコーディングされた音を聴く行為と、ライブで身体全体で音を聴く行為は全く別物だということを、改めてこの日のライブで思い知らされた。


VJも楽曲によって次々に変わり、楽曲のもつ世界観の表現性をより高めることに一役も二役も買っていた。特に、『come in alone』の際に流されていた、原爆の爆風を想起させる映像が印象的だった。


もし、天国で鳴っている音楽があるとすればこんな曲だろうなと、『to here knows when』を聴きながら何度も思った。脳内がトロトロに溶けてしまいそうな甘美で浮遊するサウンド。CDで聴いていても、どうやったらこんな音が出せるのかと思わずにいられない音だが、それが生で鳴らされているということが信じ難かった。
現実の世界にいるのか、夢の中にいるのか、本当にわからなくなる。





ちなみに、この『to here knows when』の中でも、一度演奏が中断された。その中断された時間はとても長く感じられ、会場全体が緊張感に包まれた。もしかすると、ケヴィンが演奏に満足せず、ライブがここで終わってしまうのではないかと危惧したのは私一人ではなかったと思う。

その後、無事演奏は再開され、また会場全体がこの世の果てで鳴らされる至福の音に包まれた。

極めて幻想的なサウンドを鳴らしながらも、センターに立つケヴィンはクールに淡々とギターを弾いている。その姿にまた胸を打たれた。

そして、『Soon』のイントロが流れ出す。強烈なダンス・ビートを大胆に導入したあのイントロを聴くと、一気に「セカンド・サマー・オブ・ラブ」に沸いていた90年代のUKにタイムトリップしたかのような気分になる。



『Soon』はマイブラの楽曲の中で、最もメロディが強く、キャッチーなナンバー。ブライアン・イーノは『Soon』を「ポップの新しいスタンダード」と評した。


天才と気狂いは紙一重と言うけれど、アーティストには狂気が必要で、一般人には見えない世界を切り拓き、垣間見せてくれるのがアーティストという存在だと、この日のライブを観ていて強く思った。

マイブラのライブを観ると、生半可なライブを観れなくなる。


甘美な『Soon』でフロアを沸かせた後は、コルムの畳み掛けるようなタイトで性急なドラムが繰り広げられる『feed me with your kiss』へ。

このノイジーでポップな『feed me with your kiss』により、それまでの曖昧で浮遊するドリーミーな世界から引き戻され、フロアの熱もさらに上がる。

そしてその後に間髪入れずに流れてきたのが、『You Made Me Realise』。暴力的なノイズと不思議なキャッチーさを兼ね備えたこの楽曲は、ファンの間でもずば抜けて人気が高いが、ライブでの演奏はもはや伝説的となっている。

何が伝説的なのかというと、曲の間で繰り広げられるノイズが尋常でない。2008年のフジロックでも、爆音ノイズが延々と10分以上演奏され、話題となった。

それまでの音量とは桁違いの爆音。音の粒子が身体にぶち当たり、耳の鼓膜を圧迫し、立っているのがやっと、という状態。観客がこの状態であるから、それを演奏しているメンバーやエンジニアはいったいどういう状態なのか、想像を絶する。ステージバックには、木々の中を疾走する映像が流れ続け、ジェットコースターで急降下する感覚に陥った。これが続くこと約15分。時間にして15分だったけれど、実際にはそれ以上の長さに感じた。体験したことのない世界がそこにはあった。15分間、何を考えることもなく、ただその爆音ノイズに身を委ねる。途中で音量は微妙に変化し、ラストに向けて音圧が上がっていく。

そして最後にはまた、元の『You Made Me Realise』へと戻っていった。
アンコールなし。約1時間45分のステージが終了した。


ライブ終了後はフロアからは出るものの、呆然とした状態が続き、しばらく会場から動き出せなかった。






ケヴィンの完璧主義ぶりは有名で、アルバム『loveless』は制作に2年かかり、制作費は£25万とも言わる(レーベルのCreation側とケヴィンの主張は異なり、実際にかかった制作費はわからない)。この『loveless』の制作費を払えきれなくなったことでCreationレーベルは破産寸前になったとも言われており(Creationはその後、数々のアーティストの作品がヒットし、オアシスの登場により大復活を遂げた)、レーベル主宰者のアラン・マッギーとの関係は破綻。『loveless』制作後にバンドはCreationからメジャー・レーベルのIslandへ移籍している。

『loveless』の制作に関わったスタッフ達は精神的にも身体的にも乱れ、エンジニアスタッフは次々と変わっていった。ケヴィンとビリンダはレコーディング期間中に耳鳴りの症状に陥り、このことも制作期間が長期に渡った一因となったよう。バンドは経済的にも困窮しており、ドラムのコルムはホームレスの状態で友人の家を転々とし、遂にはドラムを叩くことができない状態になる。そういった事情もあり、『loveless』のレコーディングにおいては、コルムはドラムをほとんど叩いておらず、ドラムのパートはケヴィンのプログラミングによるものが大半を占めている。

また、バンド加入時に既に一人の子を持つ母親だったギターのビリンダは、元の夫の暴力に悩んで精神的な治療を受けていたとも言われる。ケヴィンとビリンダは交際していたが、『loveless』制作期間中に別れたらしい。

そういった数々の苦難の末に完成した『loveless』だが、経営破綻状態に陥ったレーベルのCreationがスタジオ代を支払うことができず、スタジオ運営者側が『loveless』のマスターテープを差し押さえようとしたため、ケヴィンが夜中にスタジオに潜入し、取り戻そうとして、スタジオ側の人間と取っ組み合いにまでなったそう。


『loveless』という、制作に関わった人々の人生を変えたこの魔物のような1枚のアルバムは、完成から20年以上経った今もリスナーに多大なる影響を与え続けている。

リリース当初はライブでの再現が難しかったが、年月の経過とともに音響技術が進化し、ライブでもあの複雑な音を再現することができるようになったため、ここ2〜3年行われている一連のライブが実現したと言われる。


今回のツアーは『loveless』中心の選曲だったけれど、バンドは5月に再び「TOKYO ROCKS」という音楽フェスで来日する予定もあり、次回は新作からの曲も披露すると思われる。

マイブラのライブは、音楽ファンであれば一度は実際に自分の身体で体験してみて欲しい。ライブに対する概念が根本からひっくり返されるかもしれないから。



1 I only said
2 when you sleep
3 new you
4 you never should
5 honey power
6 cigarette in your bed
7 come in alone
8 only shallow
9 thorn
10 nothing much to lose
11 to here knows when
12 slow
13 soon
14 feed me with your kiss
15 you made me realise

2013/02/11

LAMA 『Modanica』Tour  2013/2/2 渋谷WWW


電子音楽とバンド・サウンドの共存の新しいかたち。


LAMAはそれぞれ別のバンドやソロで活動してるアーティストの集合体であり、ややもすれば、「お遊び的なバンド」と捉えてる人も多いかもしれない。実際に、2ndアルバムの制作に入るときには周囲から「まだ続いてるの?」といったことを言われたとメンバーは話してる。

けれど、2012年12月にリリースされた2ndアルバムを聴けば、LAMAの本気さが伝わってくる。ポップな楽曲が非常に目立った1stアルバムから、2ndアルバムではさらに実験的な試みに取り組んでいて、ミニマル・テクノまで取り入れている意欲作となっている。

その2ndアルバムの楽曲を披露するツアーの東京公演。LAMAとしては初の単独公演であり、渋谷WWWのチケットはソールドアウト。ライブは2ndアルバム中心ではあるものの、1stアルバムの楽曲もバランスよく配置された内容だった。


LAMAは楽曲の制作プロセス自体がこれまでのバンドの概念を覆す。1stアルバムでは、メンバーのうち一人が作った曲をベースにネット上のサーバーなどでやり取りをし、各メンバーがアイディアを加えていくという手法を取った。続く2ndアルバムでは男性陣がフレーズのループを作り、そのループに他のメンバーがメロディや生楽器、リズムを加えて楽曲として完成させていくというやり方が採用されている。

誰か一人が主導するのではなく、各メンバーが平等に自分たちのアイディアを出し、自身のオリジナリティを表現している。これこそが、他のバンドやソロで活動するメンバーが集まったバンドゆえの強みであり、おもしろみ。

ナカコーとミキちゃんの陰陽のコントラストが印象的なツイン・ヴォーカル、ひさ子ちゃんの情緒的なリード・ギター、電気グルーヴのエンジニアとしても活動する牛尾くんのマニアックで細やかな音処理のテクニック。メンバーそれぞれに必然性があり、このメンバーだからこそLAMAは成り立っている。そのことを改めて認識させられるライブだった。


LAMAの楽曲は3分前後の明るい曲調のポップスが多いイメージがあるけれど、『In The Darkness』や『Blind Mind』ではナカコーのソロ・プロジェクトであるiLLに通じるダークサイドの要素も見せ、多様なメンバーそれぞれのバックグラウンドがLAMAというバンドに反映されていることを印象付けた。ミニマル・テクノを取り入れた『Domino』から『In The Darkness』、そして『Blind Mind』の流れは、電子音楽と生バンドの共存のあり方という意味において、この日のライブの中で重要なポイントだと感じた。

『Domino』はLAMAの楽曲の中でも特に電子音楽寄りであり、ライブで実際に演奏したことにも驚いたが、この曲がライブの流れの節目となり、重要な役割を果たしていた。『In The Darkness』も『Blind Mind』も、ディープな嗜好を持つナカコーと牛尾くんが作ったクールな電子音楽がベースになっているけれど、そこにひさ子ちゃんの叙情的なギターのリフが重なることで楽曲全体が熱を帯びる。『Blind Mind』は、ナカコーの艶と憂いを秘めたヴォーカルの魅力が最も表れている曲でもあり、ひさ子ちゃんのギターリフとナカコーの感情的なヴォーカルが互いに反応し合う形となり、会場全体も熱気に包まれた。この日のハイライトの一つだった。


後半で披露した『D.B.A』のイントロでは、打ち込み音の音量が最大になり、強烈なライトが点滅する演出で、その様子はクラブイベントそのものだった。この日のライブは19時スタートだったけれど、エレグラのようなオールナイト・イベントに来ているかのような感覚に陥った。ちなみに、この日のVJや演出は注目を集める映像作家の細金卓矢氏が担当していたとのこと。


その後に披露した『Parallel Sign』から『Know Your Lights』の流れは、ファンの期待に真正面から応えるもので、熱気を最高に上げてからの、物語のエンディングを感じさせる『Life』への流れがとても美しかった。『Life』はモコモコとした不思議な音のテクスチャーが背景に横たわっている楽曲で、ステージを照らすドットのライトがその音のテクスチャーを視覚化していた。ここでもひさ子ちゃんの感情に訴えかけてくるギターのリフがこの楽曲のキーとなっていた。


アンコールはなんと2回。2回目のアンコールで披露した『Cupid』は、そのピュアな初々しさ、フレッシュさを感じさせる点でLAMAの楽曲の中でも群を抜いていて、ポップソングとして珠玉のナンバーであることを改めて実感。

マニアックな電子音楽がベースにありながらも、あくまでも最終的には幅広いリスナーに届くポップソングとして奏でることを目指す。『Cupid』からは、そうしたLAMAの基本姿勢が伝わってきた。

アンコールラストの『Dreamin'』では、メンバーそれぞれが楽器にエフェクトをかけ、実験的なノイズをかき鳴らし続けた。


ポップソングもノイズもエレクトロもやる。そういう柔軟さ、不確定さが、このバンドのおもしろいところで、それはメンバーそれぞれが別の活動場所を持っているからこそ可能なことでもある。そして、LAMAは新しいことを取り入れる実験精神と、ポップスとして仕上げるという姿勢のバランスが絶妙であるからこそ、多くの新たなファンを獲得しているのだろう。

これからは、こういった形を取るプロジェクトやバンドがより一般的な存在になってくるように思う。それぞれが元々持っている自身の強み、独自性を発揮してるのだけれど、LAMAという一つのバンドになったときに、新しいものが生まれる。

このLAMAに触発されて、新しいおもしろいプロジェクトが生まれてくるといい。



2012/11/11

Norah Jones Japan Tour 2012 @日本武道館 2012/11/9




ニューヨーク生まれ、テキサス育ち、現在33歳。名門ジャズ・レーベル、BLUE NOTEからリリースした1stアルバム『Come Away With Me』が全世界で大ヒット。第45回のグラミー賞では主要4部門を含む8部門全てで受賞した、世界の歌姫ーNorah Jonesーの来日公演を日本武道館で観てきた。


 2002年9月の初来日、2005年5月の2度目の来日に続き、7年ぶりとなる3度目の来日公演。今回もチケットはほぼ即完売したとのこと。


 会場に駆けつけた満員の観客は、クラブ/Hip Hop系のイベントにいそうなストリート系の若い男性から、Norahと同世代の30代女性、カップル、50代前後のジャズを聴いていそうな男性、老夫婦と、年齢層は本当に幅広く、彼女がいかにジャンルの壁を越えて多くの音楽リスナーに愛されているのかを実感する。全体的にはやはりNorahと同世代の女性の姿が一番目立った。仕事帰りに、一人で観に来ている感じの女性の姿も多かったのが印象的だった。


 公演概要には前座の名前が挙がっていなかったので、前座なしで19時からスタートするもだと思っていたけれど、男性ミュージシャン4人がステージに登場し、ブルース/カントリー調のインスト楽曲を数曲披露。後から調べて知ったのだけれど、このバンドはノラ・ジョーンズが参加するバンド、The Little Williesのギタリスト、JimCampilongoのバンドだということだった。JimCampilongo名義でCDもリリースしていて、このバンド形式でもブルース〜カントリー調の楽曲を深みのある音で演奏していて、渋かった。


 この前座のバンドの演奏が30分ほどあり、その後休憩を挟んで、20時頃からNorah Jonesのライブがスタート。ステージ上には折り鶴が天井から吊り下げられていて、真っ暗の中、パープルのライトがその折り鶴を照らす。日本武道館とは思えない、まるでどこかの小さなライブハウスのような雰囲気のあるステージを演出していた。


 1曲目はデビューアルバムからの『Cold Cold Heart』。CDで聴くのと寸分違わない、あの歌声が武道館に響き渡る。1曲目を聴くだけで、本当に来て良かったと、早くも私の心は満たされていた。

 続く2ndアルバムに収録されている『What am I to you? 』では、大きくアレンジを変えての演奏。そして、この後からは最新アルバムを中心とした流れとなり、ダークな『Little Broken Hearts』、『Say Goodbye』、『After the Fall』といった曲が続く。失恋を歌った曲からは、ノラのプライベートも垣間見える。

 彼女は曲により、キーボードとギターを替えて自在に演奏し、その唯一無二の歌声だけではない多彩さを観客に印象づける。

 ブルージーな『It's Gonna Be』、ムーディーなバラードの『Rosie's Lullaby』では、これでもかというぐらい大人の女性の魅力を見せてくれた。

 
 演奏の合間には観客から『I Love You』といった声が次々と掛けられ、その一つ一つに彼女は応えていた。こういうところも彼女が幅広く愛される要因なんだろうなと感じた。大スターなんだけれど、決して飾らないし、お高く止まってもいない。


 途中には最新作をプロデュースしたDanger Mouseのアルバムに参加した際の楽曲『Black』も披露。


 しかし、この日、彼女の魅力を何よりも堪能できたのは、シンプルなピアノソロで演奏した『Painter Song』。スポットライトに照らされたピアノの前に座り、軽快にピアノの鍵盤を弾きだす。ピアノとNorahの歌声のみが、静まりかえる武道館の中に響き渡る。シンプルでミニマルな美しさに鳥肌が立つ。ゴージャズではない贅沢さ。

 実際にはステージは遥か遠くにあるのだけれど、彼女の息継ぎまでも感じられ、まるで小さなライブハウスで目の前で歌っているかのように、彼女を身近に感じられた。息を飲んでただただ彼女の歌声の一つ一つをじっくりと堪能する。

 ロック寄りのアプローチも彼女の新たな魅力を浮き出させるけれど、やはり彼女の魅力はこういう正当派のジャズ寄りの楽曲なのだと、会場にいる誰もが改めて感じたのではないかな。シンプルなほど、素材の良さが引き立つ。


 そして、そこから彼女が『Don't Know Why』のイントロをピアノで弾き出すと、会場から大きな歓声と拍手が起きる。CDに収録されているバージョンとは異なるアレンジで、スローテンポでしっとりと歌いあげた。オリジナルバージョンも聴きたかったという思いもあるけれど、この曲を生で聴けただけで大満足だった。


 ラストのパートでは美しい壮大なバラード『Miriam』、そして最新作からはベースが印象的なビートの効いた『Happy Pills』も披露。この『Happy Pills』は非常にライブ映えする楽曲だと感じた。


 ジャズの枠にはまらず、作品ごとに大きくアプローチを変えて様々なチャレンジを試みている彼女の姿勢を改めて感じられるステージだった。デビュー作と2ndアルバムでジャズ・ボーカリストとして不動の地位を築きながらも、新たなフィールドに出て行く潔さとチャーミングさこそが、実は彼女の魅力の源なのかもしれない。

 本篇最後の『Lonestar』では、ほっこりする温かさと幸福感で会場を包みこんだ。


 本篇だけでも予想以上のボリューム だったけれど、アンコールにも応えて再びステージに登場してくれた。アンコールでは、『Sunrise』、『Creepin' In』をアコースティックギターで披露し、観客はそれに手拍子で応答。会場中がリラックスしたイージーなムードに包まれた。そして、締めくくりは『Come Away With Me』。

 代表曲はほぼ網羅し、最新作からの楽曲とバランスをとった構成で、大方のファンは大満足だったと思う。

 
 様々なジャンルを行き来するNorahの歌声を聴きながら、いろんなアーティストとのコラボを頭の中で妄想してみた。これからもいろんなアプローチであっと驚かせてくれることに期待したい。








2012/10/13

Four Tetのデビューシングル『Thirtysixtwentyfive』

Four Tetは、ロンドン出身のエレクトロニカ・アーティスト、Kieran Hebdenのソロ・プロジェクト。

このFour Tetが2012年にリリースした日本独自企画盤『Pink』は、配信でリリースされていたシングル曲に新曲が2曲追加されているのだけれど、これは配信音源を隈なくチェックしてるようなFour Tetのファンだけでなく、より多くの音楽リスナーが彼の音楽を耳にするきっかけになるのではないかと思うと、やはりこれからもCD化して欲しい。

今回は、この『Pink』でますます気になるアーティストとなったFour Tetの過去作を。

98年にOutputレーベルからリリースされたFour Tetのデビュー作『Thirtysixtwentyfive』。現在、Soundcloudにアップされてるこの36分25秒のシングルは、97年の秋にレコーディングされたので、20歳の頃の作品となる。

はっきり言って、ほとんど今のFour Tetと変わらぬクオリティの高さ。「鬼才」と呼ぶにふさわしい。



CDとvinylは廃盤。レーベルのOutput Recordingsは閉鎖されてるから、権利関係で難しそうな気はするけれど、国内盤で再発されてもいいのでは?と思う。

13分30秒を超えた辺りからは、Four Tetのトレードマークとも言える緻密でスリリングなサウンドが聴ける。

Hip Hop、JAZZ、エレクトロニカといった要素をサンプリングした楽曲は、DJ Shadowにも通じる。ちなみに、DJ Shadowのデビューアルバム『Endtroducing.....』がリリースされたのは1996年。『Thirtysixtwentyfive』は翌97年の秋にレコーディングされている。

Four Tet好きなら聴き逃してはいけない重要作。
ちなみに、NMEの1998年のSingle Of The Yearでは38位にランキングされています。

2012/08/25

SUMMER SONIC 2012 @幕張  2012/8/18


GRIMES

イギリスのレーベル、「4AD」から最新アルバムをリリースしてるカナダの宅録系女性アーティスト。ジェケ写のゴス風のイメージから、気にはなるけど敢えて積極的にアルバムを聴いたりはしてなかったのだけど、ライブ観てすっかり好きになった。

ライブは彼女と、キグルミをかぶったもう一人の男性がメイン。
Grimesは歌いながらキーボードと機材を操作。
エキセントリックで圧倒的な個性を感じさせる佇まい、高音で浮遊する歌声、自ら機材を操って作曲する才能。個性的でありながらポップな楽曲、同性から見てもかっこよくてキュートなキャラクターは、少しBjorkをも想起させる。

これはPitchfolk Festivalの映像。



日本からもこういう圧倒的な個性と才能を併せ持つ女性アーティストが出てきたら、大分音楽シーン全体がおもしろくなると思うんだけど。




CDで音だけ聴くより、生でパフォーマンス観た方が断然魅力が伝わってくるタイプのアーティストだと思う。日本の女性の音楽リスナーに、もっと聴いてもらいたいです。



SBTRKT

これまでにRadioheadやM.I.A、Gorilas等のミックスを手がけてきた音楽プロデューサーがSBTRKT名義で2011年にデビュー・アルバムをリリース。公の場で顔は一切みせず、ライブでもお面をかぶってパフォーマンスするという、謎に包まれたアーティスト。

デビュー・アルバムは各メディアでも絶賛され、昨年のFUJI ROCK FESTIVALでも来日している。

時間帯的に、MOUNTAIN STAGEのPASSION PITと重なってたので、観客は予想していたよりも少なめ。ただし、SBTRKTが登場した時の歓声からは期待度の高さが伝わってきた。

ソウルフルで上質でセンスの良いクラブ・ミュージック。大人も楽しめるダブステップ。
アルバムで聴く以上に、ライブではソウル/ファンクの要素を強く感じた。

彼はSBTRKT以前は、クラブジャズ・シーンで活動していて、Aaron Jeromeとしてアルバム『Time To Rearrange』をリリースしている。

SBTRKT名義ではアーティストとしては「新人」の部類に入るけど、作品だけでなくライブパフォーマンスでも既に安定感と余裕を感じさせた。
ライブではパーカッションを強調したアレンジも聴かせ、観客を盛り上げる。


UKグライム・シーンで注目される女性シンガー、Roses Gaborをボーカルにフィーチャーした『Pharaohs』はライブ映えするダンス・トラック。




Little Dragonのユキミ・ナガノをボーカルにフィーチャーしたこの曲も披露。




トラックの演奏に関しては申し分ないパフォーマンスだったのだけれど、ボーカルをフィーチャリングしてる楽曲では録音されたボーカルを流していたので、やはりどこか物足りない感じは否めなかった。フィーチャリング・アーティストもその場で生の歌声を聴かせてくれれば、完璧なライブだったと思う。


Passion Pit

SBTRKTの途中で、Passion Pitを観るためにMountain Stageへ移動。
SBTRKTは大人の余裕を漂わせるクラブミュージック。それと対照的とも言えるPassion Pitのライブは、会場に足を踏み込んだ途端に浮き足立つような高揚感に包まれていた。色で表現するなら、黒のSBTRKTに対して、Passion Pitはピンク。

Passion Pitのライブは、一言で言えば「ピースフル」。
ああ、音楽ってやっぱりいいな、と思わせられたライブだった。

Passion Pitはナードな大学生5人組の、宅録系エレポップ・バンド。「ナード」があまりに宣伝文句になってるイメージだったけれど、ライブ観てその宣伝文句が誇張されたものではなかったのだと知った。ドラムのメンバーはメガネ(おしゃれメガネじゃない)を掛けてるし、他のメンバーも全く売れてるアーティストっぽさ、洗練された感じがない。どこにでもいそうな、内気な学生風。

また、ボーカルでソングライティングを手掛けるマイケル・アンジェラコスは、躁うつ病を持病に抱えていて、ライブをキャンセルせざるを得ない状況になることがこれまでに度々起こってる。今回のサマソニ直前の海外での公演もいくつもキャンセルとなっていて、今回来日できるのか非常に不安視されていたはず。

けれども、この日は無事来日し、幕張のステージに立ち、非の打ち所が無い素晴らしいライブを完璧にやり切ってくれた。来日してくれたことだけでも、ありがとうと言いたい。あのファルセット・ボイスを始終、力の限り振り絞って全力でパフォーマンスしてくれた。

そんな内向的なキャラクターの彼らが生み出す音楽が、オープンでドリーミーでとんでもなくポップであるということに、感動させられる。音楽が人と人を繋げて聴く人を一つにする。彼らのライブを観て、幸せな気分にならない人はそうそういないだろう。

ステージ後方には、太陽の光の中で天を仰ぐ腕が映し出されているセカンドアルバムのジャケット写真が掲げられていて、あのイメージが彼らの今向かっている方向を全て表してると感じた。

終盤、前の方の観客は曲に合わせてぴょんぴょん跳ねていた。
そして、キラーソングの『Sleepyhead』のイントロが始まると、悲鳴に近い歓喜の声に包まれる。『Sleepyhead』から『Little Secrets』へ。観客は大合唱で、最高にハッピーなムードに包まれたままライブは終了。

Passion Pitの楽曲は、ライブで聴いて改めてそのポップネスの完成度の高さを感じた。どれもシングルにできるほど、キャッチーなメロディー。

ファンとしては、マイケルの持病がいい方向に向かってくれることを願うばかり。次回の来日公演が決まったら、恐らくチケットは即完売するんじゃないかな。











Death Cab For Cutie

サマソニにこれまでも出演しているデスキャブ。
アメリカ・インディーシーンの雄というイメージが強い彼らも、サマソニのラインナップの中ではもはやベテラン勢に入る。サマソニのお客さんの平均年齢は20代と思われるけれど、デスキャブの観客は明らかに30代以上の人たち、長年デスキャブを聴いてきたと思われる人たちが多かった。

この日のライブは新旧の楽曲を織りまぜた構成。

デスキャブの楽曲は決して派手さはなく、ボーカルのベン・ギバードの繊細で温かみのあるボーカルと、腕の確かなバックのメンバーが紡ぎ出す緩急の効いたギターサウンドがリスナーの胸にじんわりと広がる音楽性が本国アメリカのみならず、ここ日本でもデビュー以来長年に渡って熱烈なファンを獲得している。
ライブでも、特に観客を盛り上げるような派手なパフォーマンスはないけれど、彼らのペースでじわじわと観客の感情を震わせる。

彼らの楽曲は、『A Movie Script Ending』のPVのような、誰もが持っているであろう若い頃の特別な思い出を聴く人の頭に鮮やかに蘇らせる。




忙しい毎日の中で忘れかけていた、あったかい気持ちを思い出させてくれる。だからこそ、Death Cab For Cutieというバンドは、ファンの一人ひとりにとってかけがえのない存在であり続けるのだと思う。

サマソニ終わってから、久しぶりに彼らの作品を聴き返した。




Sigur Ros

この日のトリを締めくくるSigur Rosのステージ。Sigur Rosとしては2008年の単独公演以来、約4年ぶりとなる来日。
2008年にリリースした前作『Med Sud I Eyrum Vid Spilum Endalaust』は、それまでの作品から大きな変化と告げた異色の作であったけれど、最新作では再び元の作風に回帰した彼らが、ライブではどのような展開を繰り広げるのか。そういったところに大きな注目が集まる中、彼らは登場し、静かに音が鳴り響き始めた。

前回に観たSigur Rosのライブは、FUJI ROCK FESTIVALのホワイトステージのトリとして夜の10時頃から始まったステージだった。夏とはいえども、夜の苗場はかなり気温が下がり、半袖だと身震いするほど。自然に囲まれたホワイトステージの壮大な雰囲気の中で、ひんやりとした空気とともに鳴り響く彼らの音像の幻想的な美しさは、今も鮮明に覚えている。彼らのライブを体験する上で、これ以上ない最高のシチュエーションだった。

今回はMountain Stageの屋内という環境。ステージには3つの大きなスクリーンが配置されていて、抽象的な映像が流れる。ホワイトステージのような自然に囲まれた環境ではないけれど、彼らの演奏を聴くだけで大自然の風景が頭に浮かんでくる。そして、彼らの演奏力、表現力という点においては、やはり前回よりも数段アップしていると感じた。

一つの山場となった『Festival』では、前半のパートで一切の音が一瞬消え、ヨンシーの歌声だけが会場に鳴り響く場面があり、静寂で神秘的な世界に引きこまれた後、弾むように楽器が一斉に鳴り始め、まさに歓喜の声が会場から上がった。

その後は『Olsen Olsen』を挟んで、『Hoppípolla』のイントロが鳴り始める。やはり、Sigur Rosの数ある楽曲の中でもこの楽曲は格別にドラマティックであり、ファンにとっても特別な想いが詰まっているようだった。




ラストは2002年リリースのアルバム『( )』からの『Popplagið』。壮大で激しく、厳か。この楽曲を聴いていると、自然の前ではいかに人間が弱く小さな存在なのか、ということを感じる。彼らの音楽は、自分たちの好き勝手にしてこれ以上自然を怒らせるなと、世界中に警告を発しているように思える。彼らの自然に対する考え方については、インタビューやビデオを通して感じ取っていたけれど、やはり今の日本のこの状況の中で『Popplagið』を聴いていると、いかに私たち人間の生活を便利にするといっても地球上の全ての生命に危害を与えるようなもの、つまり原発は一刻も早く止めなければいけないのだと、今の日本に訴えているようにも感じた。

正直言うと、私は昨年の原発事故が起きるまで、彼らの曲から「原子力」についてを想起したことはなかった。けれど、改めて振り返ってみると、彼らはこれまでに『untitled #1 (vaka)』のPVでも、毒ガスマスクを付けた子供と核戦争後の世界を想起させる映像を用いている。




言葉で明確に何かを訴えているわけではない。けれど、彼らの音楽は聴く人の感情にダイレクトに訴えかけ、想像力を掻き立てる。

彼らの音楽が警告してくれているうちに、取り返しが付かないようなことになる前に、私たちが変わっていかなければ。そんなことを感じさせるライブでもあった。

『Popplagið』でこの日のステージを締めくくった後、サポートメンバーも一緒に全員が舞台に再び登場し、皆で肩を組んで一礼。会場全体から止むことのない拍手が鳴り響いた。


                                  


2012/04/01

Fountains of Wayne LIQUIDROOM, Tokyo, Japan 2012/3/31

単独来日公演としては、2007年の来日以来。Fountains of Wayneの東京公演2日目を恵比寿リキッドルームで観てきた。

前座には、Fountains of Wayneと親交も深いシンガー・ソングライター、MIKE VIOLAが登場。

2011年のフジロックでもFountains of Wayneのライブを観たけれど、この日のライブの方がお客さんの盛り上がりも含めて、数段良いライブだったと思う。

始まりから『Bought For A Song』や『Barbara H.』といったハイテンションな曲を演奏してお客さんの期待に応える。『Denise』では、観客のハンドクラップが会場全体の一体感を醸し出し、一気に会場の温度が上がっていく。

中盤は新しいアルバム『Sky Full of Holes』の曲を中心に演奏。
『Sky Full of Holes』の曲はライブで盛り上がるようなものはあまりないけれど、何をやっても上手くいかない男二人のことを歌った『Richie And Ruben』や、アメリカ国内ツアーの移動風景を歌った『A Road Song』のような、けっして輝かしい毎日ではない、日常の何気ない光景を鮮やかに切り取った歌が多い。そういった楽曲は、年齢を積み重ねた今の彼らだからこそ出せる深みと、温かさを感じさせた。


『Hey Julie』では観客の中から3人を舞台に上げて、マラカスなどの楽器を一緒に演奏させる演出も。会場のお客さんのハンドクラップと掛け声も相まって、お客さんとバンドの一体感が会場を包みこむ。温かいラブソングが、さらにほっこりさせる曲になった。





本篇でのハイライトは『Mexican Wine』。夏はもう少し先だけど、この曲を聴くと夏が待ち遠しくなる。




『Radiation Vibe』は間奏部分で、カバー・メドレーを披露。これがまた素晴らしい演奏で、お客さんのハンドクラップを誘う。彼らのオリジナルとはまた一味違った、ハードな一面を見せてくれた。

アンコールでは『Survival Car』『Stacy's Mom』と立て続けに演奏し、盛り上がりも最高潮に。
そして、ラストは初期の名曲『Sink To The  Bottom』。大合唱と終盤のダイナミックな演奏で、メンバーもお客さんも完全燃焼。



この日のチケットは売り切れたそうで、ライブ終了後の周りのお客さんの声を聞いていても、非常に満足度の高いライブだったと思う。
一緒に観ていた友人も大満足だったし、ライブの良さを再確認させてくれる一夜だった。

メンバーそれぞれ外見は年相応に変化してるものの、クリスの歌声は若い頃と全く変わっていない。これからも自分たちのペースで活動を続けて、3年後ぐらいに新作を出して来日してくれれば、ファンとしてそれ以上望むものはない。

次回の来日公演には、自分も含めてこの日のお客さんの多くがまた駆けつけるんじゃないかな。



1. Bought For A Song
2.Bright Future in Sales
3. Barbara H.
4. Someone To Love
5.Denise
6.Summer Place
7.Richie And Ruben
8.Valley Winter Song
9.A Road Song
10.Hey Julie
11.A Dip in the Ocean
12.Red Dragon Tattoo
13.Mexican Wine
14.Radiaton Vibe

アンコール
15.Fire In The Canyon
16.Cemetery Guns
17.Survival Car
18.Stacy's Mom
19.Sink To The Bottom


2011/09/12

FUJI ROCK FESTIVAL'11 3日目④ 2011/7/31(SUN) Wilco/The Music

Wilco(WHITE STAGE)


Wilcoを観るために今年のフジに参加したというお客さんもきっと多かったと思う。
アメリカの至宝、WilcoがWHITE STAGEのトリとして登場。

Wilcoのファンは年齢層も幅広く、熱狂的なファンが多いように思う。
Wilcoのパフォーマンスに対応するかのような観客の歓声を聞いていると、なんだか海外のフェスにいるかのように気分になった。

アメリカの歴史とともに脈々と受け継がれるカントリー・ミュージックを吸収して咀嚼し、今の時代にフィードバックするWilco。

まだまだWilcoの音楽の奥深さは理解しきれてない。
アメリカ音楽のルーツを知れば知るほど、Wilcoの凄さがありありとわかってくるはず。

懐の深さを感じさせる、FES最終日の終焉を飾るに相応しいライブだった。



しかし、このWilcoを最後方で観ているときに、高校の頃から好きだったアーティストが泥酔して横を通り過ぎるというアクシデントが。
ということで、そっちがすんごく気になって、Wilcoを観ているどころではなくなってしまった。

フジロックは会場内でもアーティストがそこら中を普通に歩いてるわけで、それも魅力の一つ。
ただし、アーティストの「素」の部分も観れるというのは、ファンとしては嬉しいとも限らないかも。
まあでも、それぐらいアーティストは気を抜けるということだから、やっぱりフジロックは素晴らしいフェスだと思う。



The Music(GREEN STAGE)


そして、2011年のGREEN STAGEのラストを飾るのが、このステージがバンド活動のラストとなるThe Music。

4人の演奏が化学反応を起こして巻き起こるグルーブ、ロブの驚異的なダンス・パフォーマンスとハイトーン・ヴォイス。
FUJI ROCK初出演の2002年のRED MARQUEEのステージは、今でもはっきりと記憶に残ってる。まさに伝説的なライブだった。

FUJI ROCKを特別に思い、FUJI ROCKERに愛されてきた彼らの最後の勇姿を見届けようと、23時を回ってからステージだったにも関わらず、多くの人たちがGREEN STAGEに残っていた。

スキンヘッドにパーカーを被ったロブがステージに現れる。

『The Truth Is No Words』『Fire』『Strength In Numbers』といった代表曲が次々と演奏され、お客さんは嬉しい反面、一曲終わるごとに彼らの日本でのラストライブの終わりが近づくのを感じる。
周りにいたお客さんたちは、じっと彼らの姿を目に焼き付けるかのように、見守るように観てた。

『Getaway』が流れてくると、いよいよライブが終盤に差し掛かったことをはっきりと感じる。

『Bleed From Within』では途中、ロブは舞台から降りて左右に走り回り、あのキレのあるダンスを披露した。
そして、搾り出すかのように発せられたヴォーカルは、彼らがこれまで向き合ってきた苦悩そのもののように聴こえてきて、痛々しかった。

これほど真摯に音楽をやってきたバンドはなかなかいない。
自分たちの音楽に真摯に向きあえば向き合うほど、音楽を続けることに苦しみを感じてしまうこともあるだろうなと、このバンドを観ているとそんなことを考える。

最後は「ありがとう」とMCをして、遂に『People』のイントロが流れてくる。

2002年にレッドマーキーで観たステージは、いろんなアーティストのライブをひっくるめた私のライブ体験の中でも屈指のパフォーマンスで、あの時に渦巻いていたグルーブとエネルギーの凄さは異常だった。特に、この『PEOPLE』は忘れられない。RED MARQUEEの地面が揺れるほどの盛り上がりと酸欠になりそうなほどの熱気が充満していた。

あの時の凄さを知っているからこそ、このラストライヴの『PEOPLE』を聴くと、解散に至った経緯もなんとなく理解できてしまう気がした。
ロブの歌声はどことなく苦しそうに聴こえてきた。
バンドを解散せざるを得なくなってしまったこの状況に対する悲しみが伝わってくるようだった。

ロブは解散の理由を「もう楽しめなくなってしまったから」とインタビューで語っていた。


高校卒業と同時にCDデビューした当時は、ただ音楽をやることが楽しくて、観客を踊らせたい一心でバンド活動を行っていた。
けれど、デビューからあまりにも注目を集め、いきなり人気が出た新人バンドはセカンドアルバムの制作で苦しむ。
3rdアルバムの歌詞は、ティーンネイジャーの日常を歌ったデビューアルバムの歌詞とは打って変わって、苦悶し続け、それでも前に進もうとする彼らの精神性が表現されている。
3rdアルバムで復活したかのように見えただけに、解散という結果になってしまったことは
やっぱり残念でならない。


ただ、音楽に対するピュアな気持ちを今は取り戻せていないとしても、彼らの持つポテンシャルの高さはフジロックのお客さんが十分知ってる。
休養をして、また音楽を楽しめるようになったらそれぞれで音楽活動を再開して欲しいと思う。
引退するにはまだ早過ぎる。


彼らとは同年代で、2002年のフジロックのデビューとこのラストライブをこうして見届けることができたことを思う感慨深い。








2011/09/11

FUJI ROCK FESTIVAL'11 3日目③ 2011/7/31 CAKE/The Chemical Brothers

CAKE(WHITE STAGE)

全く同じ時間帯でRED MARQUEEのATARI TEENAGE RIOTとかぶってたけど、なんとなくCAKEを観にWHITEへ。

WHITEに着くと、それはそれは楽しい空間が出来上がっていた。

CAKEはアメリカはサクラメント出身、91年から活動するベテランのオルタナ・カントリー・バンド。
最新作はなんとビルボード1位になるなど、まだまだ人気が衰えない、アメリカの国民的バンドの一つ。

オーディエンスもこの時間帯になってくると、とことん楽しもうと曲に合わせてノリノリで踊る人もいれば、座ってのんびり観ている人もいて、本当に開放的な雰囲気が漂ってる。

『Sick of You』ではオーディエンスを左右に分けて歌詞のフレーズを歌わせ、声の大きさを競わせるという、粋な計らいも。
あえて、左右を同じぐらいの人数にわけないで、多数と少数で分ける。
それで歌わせるんだけど、少数のグループの方が声が大きい。多い方のグループは他人任せだ、怠けてる!みたいなことを言って闘争心を煽る。

オーディエンスを巻き込むのが本当に上手。
笑いが沸き起こる。

そして、終盤にボーカルのジョンが 私たちに向けて送ってくれた言葉は忘れられない。
「ガンバッテ ニッポン!」
シンプルだけど、十分すぎるほど伝わってきた。

今回、どの海外アーティストも、同じような気持ちでこのフジで演奏してくれていたと思う。
音楽で日本を励ましてくれた。

がんばるよ、とあの場にいた皆が心の中で返してた気がする。

本当に楽しいひとときだった。




Chemical Brothers(GREEN STAGE)

FUJI ROCKは今回で6度目の出演となる常連さんのChemical Brothers。

巨大なスクリーン、大掛かりな舞台のセッティング、山を照らす緑のレーザービーム。
二人の登場を待つGREEN STAGEの後方では、まだまだ踊りたいっていうお客さんのケミカルに対する期待が、周りからびしびし伝わってきた。

ステージは『Another World』でゆっくりと幕開ける。
そして『Do It Again』へと繋がり、GREENは一大ダンス・フロアーへと変わっていく。

前半のハイライトは『Swoon』。
決して彼らの他の曲に比べて踊れる曲ではないけれど、ライブの流れを変える大きなアクセントになる曲だと思う。
夜空の下で聴く『Swoon』はより一層甘く儚く、バックに映しだされるVJがこの曲をさらに印象づけていた。



そこからは『Star Guiter』『Hey Boy,Hey Girl』『Out Of Control』『Setting Sun』など、これでもかというぐらいヒット曲を次々と放つ。

ラストから2曲目には『Leave Home』と『Galvanize』をミックス。
HIPHOPをフィーチャーした『Galvanize』は彼らのライブの中では異彩を放っていて、盛り上がるのだけれど、ミドルテンポなだけに踊りたくても踊りきれないという歯がゆさを感じた。
なので、個人的にはなんとなく最後は消化不良で終わってしまった。

フェスに来る数万人の観客の期待に応えつつ、毎回新鮮さを出していくのは確かに至難の業だと思う。
それでも新しい発見や刺激を求めてしまうのは、酷というもの?



2011/09/10

FUJI ROCK FESTIVAL'11 3日目② 2011/7/31 CORNERSHOP/斉藤和義/YMO

CORNERSHOP(FIELD OF HEAVEN)

CORNERSHOPは、イギリスで育ったアジア系のSingh兄弟と白人の4人組バンドとして92年に結成(今はTjinder SinghとBen Ayresの2人組)。
バンド名は、イギリスで生活するインド系の人々が持つ典型的な「小さな街角の雑貨店」から付けられ、人種差別主義に対して声を挙げてきた彼らは、最近ではフリーチベットの活動もサポートしているよう。





インド音楽とブリットポップにダンス・ミュージックがミックスされたオリジナリティー溢れる音楽性で、90年代に日本でも大ヒットした彼ら。2009年にオリジナルアルバムを7年ぶりにリリースし、音楽シーンに戻ってきた。

シタールが醸しだすゆったりとした瞑想的なムードがFIELD OF HEAVENを包みこむ。
CORNERSHOPは紛れもなくブリットポップ期を代表するアーティストで、「懐かしい」という言葉がまず頭を過ぎった。
Tjinderのヴォーカルは独特のリズム感があって、時間の流れがスローダウンするかのように感じさせる。


『Brimful of Asha』では、リアルタイムで聴いていた当時を思い出すかのように、曲に合わせて楽しそうに振り付けをしながら踊る人たち。
ピースフルでハートフルな空間が広がっていた。




斉藤和義(WHITE STAGE)

お昼にはAvalonで会場に入りきらないほどのオーディエンスを集めた斉藤和義、WHITE STAGEに再登場。
ドラマーは中村達也、ギターはフジイケンジ。

2曲目にはAvalonでも演奏した『猿の惑星』を再び歌う。
その流れで、『幸福な朝食 退屈な夕食』を。



この曲は1997年にリリースされたアルバム『ジレンマ』に収録されている。
『ずっとウソだった』や『猿の惑星』で、一気に世間の注目をを集めたけれど、この『幸福な朝食 退屈な夕食』なんかを聴くと、彼は以前から恋愛だけを歌ってたわけではなく、社会的に対する鋭い視点やアイロニーを歌に映しだしてきたアーティストだったと気付かされる。

この日は一部の歌詞を変えて、「東京電力」を歌の中で皮肉っていた。


Watch 12バカにすんなよ! 斉藤和義 中村達也 on USTREAM 『空に星が綺麗』 2011.4.29 全20曲 斉藤和義 中村達也 on USTREAM 『空に星が綺麗』 2011.4.29 全20曲 in Music  |  View More Free Videos Online at Veoh.com

そして、Avalonでも演奏したあの曲のイントロが流れてくる。
この流れだとこのWHITEでも歌うのか、と思いきや原曲『ずっと好きだった』の歌詞を歌った。
原曲で聴きたい人もいるだろうし、さすがにWHITEでは『ずっとウソだった』はやっぱり歌わないかな、と思いながら、原曲の歌詞に注目して聴く。

原曲は資生堂のCMソングで、斉藤和義が得意とする甘酸っぱい恋愛の歌。
この歌を作ってた頃は、こんなポップなメロディに原発の歌詞を乗せて自分で歌うなんて、考えもしなかっただろうに。

3月11日以前に戻れるなら戻りたいと、こんなポップで甘い恋愛の歌を聴くと、そんなことを思ってしまう。

もう少し観ていたかったけど、YMOが始まる時間になったからGREENに移動した。

すると後ろから、再びあの曲のイントロが流れてきた。
やっぱり、斉藤和義はWHITE STAGEでも『ずっとウソだった』を歌った。
揺らがない姿勢は十分すぎるほど伝わってきた。

斉藤和義ぐらいのメジャーなアーティストで、3月11日以降で原発のことを歌で取り上げて話題となっているアーティストは今のところ斉藤和義以外にはまだ出てきてないな、と改めて思う。

もちろん、それぞれの方面で原発について歌っているアーティストや脱原発を訴えてるアーティストはいるけれど、こういうメジャーなアーティストが堂々と表明して歌うということが社会に与えるインパクトは大きいし、そこで賛否両論の意見が出てくることが貴重だと思う。


YMO(GREEN STAGE)

この日のハイライト、YMO。
開演前で既にGREEN STAGEの最後方の辺りまで人がぎっしり詰めかけていた。

両側のスクリーンに映しだされるメンバーの姿。
日本を代表するアーティストである3人が集結するステージを眺めるだけで、ゾクゾクした。

YMOのライブを観るのは初めて。
この日のステージで受けた衝撃は期待を遥かに超えた。

CDで聴いていたYMOの音と、この日のライブで聴いた印象はかなり違った。
というのも、YMOのメンバーはかなりのアレンジを施し、最新のサウンドで仕上げて来ているから。

その音から古臭さ、懐かしさは全く感じさせなかった。

『Behind The Mask』で映しだされる3人の姿は、これ以上ない程クール。
幸宏さんのタイトなスーツ姿、黒いハットを被った教授、ベストにベレー帽の晴臣さん。
両側のスクリーンに映しだされる、真っ黒の背景に鮮やかなビビッドカラーが浮かび上がるVJ。
サウンドもビジュアルも立ち振る舞いも、全てにおいて、改めてその卓越したセンスを肌で感じた。

『Taiso』では教授がメガフォンを手に、「胸を腕の前に上げて痙攣の運動」といったセリフを放つ。スクリーンに映し出される教授の姿は、この上なく絵になってた。
高橋幸宏さんのドラムは相変わらずタイトで躍動的。

最後方の辺りでGREEN STAGEとオーディエンス全体を見つめていたけど、かなりの人が踊ってる。あの演奏を前にして、踊らずにはいられない。

『千のナイフ』もその後演奏されたけど、これなんかもYou Tubeで昔の映像と最近のを聴き比べると、やっぱり受ける印象はかなり異なる。
バックのメンバーがそもそも違うというのもある。
当時からシンセなどの機器の性能が比べものにならないほど上がってるから、当然アレンジで当時では出せなかった音を出せるということもある。







そして、その後に演奏したのが『CUE』。
私はこの曲を初めて今回聴いたけれど、この曲が一番胸打たれた。

YMOの曲でヴォーカル入りというだけでも珍しく、印象的。
高橋幸宏さんのヴォーカルを聴いていると、そよいでくる風がこの上なく気持よく感じられた。
そして、思い出したのはNew Orderだった。
New OrderがYMOの影響を受けていたなんてことはこれまで聞いたことはないけれど、両アーティストに通底するものを感じずにはいられなかった。
直接ではなくとも、YMOがテクノ/エレクトロ/ニューウェーヴ のシーンに与えた影響はそれだけ広範囲に及んでるということだと思う。
なぜ、New Orderがこれほど好きなのに、YMOをちゃんと聴いてこなかったのか、と少し悔やんだ。




ライブ終了後は全員が一列になって、肩を組んでおじぎをし、会場からは大きな拍手が送られた。

個人的には、間違いなく今回のFUJI ROCKで最もインパクトを受けたステージの一つとなった。

2011/09/08

FUJI ROCK FESTIVAL'11 3日目① 2011/7/29

2011年のフジロックも最終日。

British Sea Power(WHITE STAGE)

イギリスの6人組バンド、British Sea Power。
好きなバンドなのだけれど、WHITE STAGEに着いたときには既にラストの1曲だった。
が、そのラスト1曲が本当に素晴らしくて、尚更ラスト1曲だったのが惜しかった。

彼らはいつもライブのステージを木の枝で飾り、緑でいっぱいにする。フェスにこれほど似合うセッティングもない。

この頃には空にも青空が覗き、バックの自然と、彼らの壮大なサウンドが見事にマッチして、WHITE STAGEには開放感が溢れていた。彼らのステージを観るのは初めてだったけれど、ヴァイオリンのストリングスが特に、このWHITE STAGEの雰囲気に溶けこんでいて胸を打たれた。





アトミック・カフェ MANNISH BOYS(斉藤和義×中村達也)(GYPSY AVALON)

少し早めに移動したものの、GYPSY AVALONの狭い会場は人、人、人の山。奥の傾斜が急なところまでぎっしりお客さんが入っていて、とてもじゃないけど観れないので、諦めて裏でご飯を食べつつ耳を傾けることに。

裏から耳をすませていたから音は聴こえにくかったけれど、『バカにすんなよ』では、

「ただちに影響はありません?バカにすんな」

などと、原発事故について、歌詞を替えて歌ってた。

そして、あの場にいた皆が期待していたであろう反原発ソング『ずっと嘘だった』。
手拍子とともに大合唱が起こる。


この国を歩けば原発が54基
教科書もCMも言ってたよ安全です
俺たちを騙して言い訳は「想定外」
懐かしいあの空くすぐったい黒い雨

ずっとウソだったんだぜ
やっぱバレてしまったな
ほんとウソだったんだぜ
原子力は安全です
ずっと嘘だったんだぜ
牛肉食いてぇなあ
ほんと嘘だったんだぜ
気づいてたろうこの事態
風に舞う放射能はもう止められない
何人が被爆すれば気がついてくれるの
この国の政府


2011年のFUJI ROCKを象徴するステージの一つだったと思う。

後日、テレビ朝日で斉藤和義にまつわる30分のドキュメンタリー番組が放映された。





NO AGE(WHITE STAGE)


LAのアングラ・インディシーンを牽引するアートパンク・デュオ。
耳をつんざくようなノイズ・ギターと怒涛のドラムの中に、甘く頭に残るメロディーを時折垣間見せ、世界中から熱烈な支持を得ているこの二人。

まず、ドラムとギターという編成だけでもユニーク。
あの広いステージ上に二人だけ。
ニット帽を被ったギターのRandyがセンターに立ちはだかり、ドラム&ヴォーカルのDeanが向かって左奥に位置する。
本当に二人だけで、頭が眩むノイズの洪水を生み出す。
破壊性と創造性。
思わず頭を横に振りたくなる、轟音。
このWHITE STAGEで轟音を聴くと、本当に気持ちいい。


圧巻のパフォーマンスに、ただ呆然と観る人、頭を振る人、お客さんの反応はバラバラだった。


余計なものが一切削ぎ落とされた硬派な演奏は、彼らの揺るぎのないスタンスを感じさせた。