2009/10/30

iLL 「Force」Live @UNIT(代官山)  2009/10/30

iLLことナカコーの4枚目アルバム「Force」のライヴツアー。
iLLのライブを観るのは、iLLでデビューした当初に渋谷で行われたイベント以来。

ステージ中央には、今回のアルバムジャケットに用いられているピラミッド型の三角形をモチーフにした鉄柱のオブジェが設置されていた。
ステージに登場したiLLは「この鉄柱が光るので、気持ち悪くなる人絶対いると思います。」といったMCをして、スーパーカー時代では考えられないほど、ナチュラルに話をして会場を和んだ雰囲気にした。

「Force」のアルバムのオープニングナンバー『Tight』で幕開け。
次のナンバー『Hello』(スーパーカー時代にも同じ『Hello』という曲がある)は、今回のアルバムの特徴と言える「ギターロック回帰」が最もストレートに表れた曲。
スペーシーなサウンドに、儚げなナカコーのヴォーカル。
ナカコーの変わらない部分を感じさせてくれる。
こういう曲が再びiLLとして聴けるのは非常に嬉しい。

前半のハイライトは、前作「Dead Wonderland」からの『Call My Name』、そして非常にポップなシングルとなった『Kiss』、久々にマリンと組んだシングル『Deadly Lovely』の流れ。
シンプルなバイオリンの響きが美しい『Call My Name』で会場の空気を静寂に包み、甘美な『Kiss』へと。観客も待ってましたとばかりに一気に会場のボルテージは上がる。
花びらの雌しべと雄しべがアップで映される宇川氏作成の『Kiss』のPVがさらに甘くする。
そして、フロア仕様にアレンジされた『Deadly Lovely』がさらに観客を躍らせてくれた。







中盤は『R.O.C.K』や『Vicious』『B-Song』など、ハードなナンバーを演奏。
ここで感じられたのは、スーパーカーではできなかったROCK。
サポートメンバーの繰り出す強靭なサウンドがグルーヴを生み出す。
ナカコーがiLLでやりたかったバンドサウンドは、こういったことなのだと改めて認識した。

今回の隠しトラックである『Piano』と共に流された映像には、このシンプルなピアノとナカコーの歌う歌詞が印象的な楽曲の美しさが氷や雪の映像で見事に表現されていた。
ピアノの音色は、ナカコーのライブで非常に新鮮に響いた。

また、『Come With U』では「死」と「生」をイメージさせるような映像がバックに映し出されていた。
インタビューでもナカコーは度々「死を感じさせるものに昔から自然と惹かれる」と答えているが、確かに「iLL」や「Deadly Lovely」など、「死」を連想させる名前が多い。

ラストに差し掛かるあたりから、スーパーカー時代のライブのラストを「Karma」の延々と続く演奏で締めくくったように、一体となったバンドアンサンブルが強度を増し、カオスを生み出す。
中央に置かれた鉄柱のライトが激しく点滅し、トランス状態に引き込む。

本編を締めくくった後、アンコールで再び登場。
アンコールラストは『Guitar Wolf Syndrome』で観客を心地よい揺らぎへと導いた。

恐らく、会場に駆けつけた観客の多くはスーパーカー時代からのファンが大半だと思われるが、
ナカコーを長年見てきたファンも十分に満足できる内容だったと思う。
ギターを持ちバンド形態でロックに正面から取り組んだ今作。
ナカコーの中で、バンドサウンドは一つの区切りを迎えたのではないかと、
今回のライブを観ていて思った。

次回のアルバム、そしてライブではまたどんな新しい要素を取り入れて、私たちに驚きと興奮をもたらしてくれるのか。
ナカコーはそういうアーティストだ。




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