2013/02/24

My Bloody Valentine  2013/2/7 新木場 Studio Coast


マイブラのライブは一度体験してみないと、その凄さは絶対にわからない。これは断言できる。

念願の単独来日公演。

チケットは即完売。ヤフオクでは定価の2倍程度の価格でチケットが次々と落札された。

さらに、来日直前に、バンドとして約22年ぶりの新作アルバムとなる『MBV』を自らのオフィシャルサイト限定でリリース。日本のマイブラ・ファンにとっては、マイブラのことで頭がいっぱいになった1週間だった。

個人的には、大学生の頃に『Loveless』を初めて聴き(もちろんリアルタイムではない)、それ以来、ずっと来日を夢見てきた。2008年のフジロックでの来日公演を観ることができなかったことを5年近く後悔し続けていただけに、今回の来日はなんとしてでも観たかった。


会場となった新木場コーストのキャパは約2,400人。客層はリアルタイムで聴いていた世代というよりも、後追い世代の方が多いという印象。リアルタイムで聴いていた世代はもはや40代となっていて、ライブから足が遠のいている人も多いだろう。

入場の際には、メンバーの意向により、耳栓が配られた。ノイズによる鼓膜への影響に配慮した取り計らいだった。




ライブはリハーサルが押していたこともあり、約15分遅れて『I only said』でスタート。いきなり、何度も何度も聴いてきたイントロのフレーズが流れ、会場からも大きな歓声が上がる。

3曲目にはリリースしたばかりの新作『MBV』からの楽曲『new you』を披露。この曲ではメンバーの演奏が合わず、2回演奏が中断され、やり直された。ケヴィンは「(このような中断が)これまで5回あった。これで6回目だ。」といったジョークを言っていた。もちろん、新曲でライブでの演奏回数が少ないということもあるけれど、ライブにおいても完璧を目指すケヴィンの性格が顕著に出ていた。

マイブラのライブは初めて観たけれど、レコーディングで表現されているあの複雑かつ繊細なサウンドが、こうしてライブで再現されていることが 驚嘆に値する。

さらに言うと、CD等の録音物では聴き取れなかったサウンドをこの日のライブで初めて聴き取ることができた。根本的に、レコーディングされた音を聴く行為と、ライブで身体全体で音を聴く行為は全く別物だということを、改めてこの日のライブで思い知らされた。


VJも楽曲によって次々に変わり、楽曲のもつ世界観の表現性をより高めることに一役も二役も買っていた。特に、『come in alone』の際に流されていた、原爆の爆風を想起させる映像が印象的だった。


もし、天国で鳴っている音楽があるとすればこんな曲だろうなと、『to here knows when』を聴きながら何度も思った。脳内がトロトロに溶けてしまいそうな甘美で浮遊するサウンド。CDで聴いていても、どうやったらこんな音が出せるのかと思わずにいられない音だが、それが生で鳴らされているということが信じ難かった。
現実の世界にいるのか、夢の中にいるのか、本当にわからなくなる。





ちなみに、この『to here knows when』の中でも、一度演奏が中断された。その中断された時間はとても長く感じられ、会場全体が緊張感に包まれた。もしかすると、ケヴィンが演奏に満足せず、ライブがここで終わってしまうのではないかと危惧したのは私一人ではなかったと思う。

その後、無事演奏は再開され、また会場全体がこの世の果てで鳴らされる至福の音に包まれた。

極めて幻想的なサウンドを鳴らしながらも、センターに立つケヴィンはクールに淡々とギターを弾いている。その姿にまた胸を打たれた。

そして、『Soon』のイントロが流れ出す。強烈なダンス・ビートを大胆に導入したあのイントロを聴くと、一気に「セカンド・サマー・オブ・ラブ」に沸いていた90年代のUKにタイムトリップしたかのような気分になる。



『Soon』はマイブラの楽曲の中で、最もメロディが強く、キャッチーなナンバー。ブライアン・イーノは『Soon』を「ポップの新しいスタンダード」と評した。


天才と気狂いは紙一重と言うけれど、アーティストには狂気が必要で、一般人には見えない世界を切り拓き、垣間見せてくれるのがアーティストという存在だと、この日のライブを観ていて強く思った。

マイブラのライブを観ると、生半可なライブを観れなくなる。


甘美な『Soon』でフロアを沸かせた後は、コルムの畳み掛けるようなタイトで性急なドラムが繰り広げられる『feed me with your kiss』へ。

このノイジーでポップな『feed me with your kiss』により、それまでの曖昧で浮遊するドリーミーな世界から引き戻され、フロアの熱もさらに上がる。

そしてその後に間髪入れずに流れてきたのが、『You Made Me Realise』。暴力的なノイズと不思議なキャッチーさを兼ね備えたこの楽曲は、ファンの間でもずば抜けて人気が高いが、ライブでの演奏はもはや伝説的となっている。

何が伝説的なのかというと、曲の間で繰り広げられるノイズが尋常でない。2008年のフジロックでも、爆音ノイズが延々と10分以上演奏され、話題となった。

それまでの音量とは桁違いの爆音。音の粒子が身体にぶち当たり、耳の鼓膜を圧迫し、立っているのがやっと、という状態。観客がこの状態であるから、それを演奏しているメンバーやエンジニアはいったいどういう状態なのか、想像を絶する。ステージバックには、木々の中を疾走する映像が流れ続け、ジェットコースターで急降下する感覚に陥った。これが続くこと約15分。時間にして15分だったけれど、実際にはそれ以上の長さに感じた。体験したことのない世界がそこにはあった。15分間、何を考えることもなく、ただその爆音ノイズに身を委ねる。途中で音量は微妙に変化し、ラストに向けて音圧が上がっていく。

そして最後にはまた、元の『You Made Me Realise』へと戻っていった。
アンコールなし。約1時間45分のステージが終了した。


ライブ終了後はフロアからは出るものの、呆然とした状態が続き、しばらく会場から動き出せなかった。






ケヴィンの完璧主義ぶりは有名で、アルバム『loveless』は制作に2年かかり、制作費は£25万とも言わる(レーベルのCreation側とケヴィンの主張は異なり、実際にかかった制作費はわからない)。この『loveless』の制作費を払えきれなくなったことでCreationレーベルは破産寸前になったとも言われており(Creationはその後、数々のアーティストの作品がヒットし、オアシスの登場により大復活を遂げた)、レーベル主宰者のアラン・マッギーとの関係は破綻。『loveless』制作後にバンドはCreationからメジャー・レーベルのIslandへ移籍している。

『loveless』の制作に関わったスタッフ達は精神的にも身体的にも乱れ、エンジニアスタッフは次々と変わっていった。ケヴィンとビリンダはレコーディング期間中に耳鳴りの症状に陥り、このことも制作期間が長期に渡った一因となったよう。バンドは経済的にも困窮しており、ドラムのコルムはホームレスの状態で友人の家を転々とし、遂にはドラムを叩くことができない状態になる。そういった事情もあり、『loveless』のレコーディングにおいては、コルムはドラムをほとんど叩いておらず、ドラムのパートはケヴィンのプログラミングによるものが大半を占めている。

また、バンド加入時に既に一人の子を持つ母親だったギターのビリンダは、元の夫の暴力に悩んで精神的な治療を受けていたとも言われる。ケヴィンとビリンダは交際していたが、『loveless』制作期間中に別れたらしい。

そういった数々の苦難の末に完成した『loveless』だが、経営破綻状態に陥ったレーベルのCreationがスタジオ代を支払うことができず、スタジオ運営者側が『loveless』のマスターテープを差し押さえようとしたため、ケヴィンが夜中にスタジオに潜入し、取り戻そうとして、スタジオ側の人間と取っ組み合いにまでなったそう。


『loveless』という、制作に関わった人々の人生を変えたこの魔物のような1枚のアルバムは、完成から20年以上経った今もリスナーに多大なる影響を与え続けている。

リリース当初はライブでの再現が難しかったが、年月の経過とともに音響技術が進化し、ライブでもあの複雑な音を再現することができるようになったため、ここ2〜3年行われている一連のライブが実現したと言われる。


今回のツアーは『loveless』中心の選曲だったけれど、バンドは5月に再び「TOKYO ROCKS」という音楽フェスで来日する予定もあり、次回は新作からの曲も披露すると思われる。

マイブラのライブは、音楽ファンであれば一度は実際に自分の身体で体験してみて欲しい。ライブに対する概念が根本からひっくり返されるかもしれないから。



1 I only said
2 when you sleep
3 new you
4 you never should
5 honey power
6 cigarette in your bed
7 come in alone
8 only shallow
9 thorn
10 nothing much to lose
11 to here knows when
12 slow
13 soon
14 feed me with your kiss
15 you made me realise

2013/02/11

LAMA 『Modanica』Tour  2013/2/2 渋谷WWW


電子音楽とバンド・サウンドの共存の新しいかたち。


LAMAはそれぞれ別のバンドやソロで活動してるアーティストの集合体であり、ややもすれば、「お遊び的なバンド」と捉えてる人も多いかもしれない。実際に、2ndアルバムの制作に入るときには周囲から「まだ続いてるの?」といったことを言われたとメンバーは話してる。

けれど、2012年12月にリリースされた2ndアルバムを聴けば、LAMAの本気さが伝わってくる。ポップな楽曲が非常に目立った1stアルバムから、2ndアルバムではさらに実験的な試みに取り組んでいて、ミニマル・テクノまで取り入れている意欲作となっている。

その2ndアルバムの楽曲を披露するツアーの東京公演。LAMAとしては初の単独公演であり、渋谷WWWのチケットはソールドアウト。ライブは2ndアルバム中心ではあるものの、1stアルバムの楽曲もバランスよく配置された内容だった。


LAMAは楽曲の制作プロセス自体がこれまでのバンドの概念を覆す。1stアルバムでは、メンバーのうち一人が作った曲をベースにネット上のサーバーなどでやり取りをし、各メンバーがアイディアを加えていくという手法を取った。続く2ndアルバムでは男性陣がフレーズのループを作り、そのループに他のメンバーがメロディや生楽器、リズムを加えて楽曲として完成させていくというやり方が採用されている。

誰か一人が主導するのではなく、各メンバーが平等に自分たちのアイディアを出し、自身のオリジナリティを表現している。これこそが、他のバンドやソロで活動するメンバーが集まったバンドゆえの強みであり、おもしろみ。

ナカコーとミキちゃんの陰陽のコントラストが印象的なツイン・ヴォーカル、ひさ子ちゃんの情緒的なリード・ギター、電気グルーヴのエンジニアとしても活動する牛尾くんのマニアックで細やかな音処理のテクニック。メンバーそれぞれに必然性があり、このメンバーだからこそLAMAは成り立っている。そのことを改めて認識させられるライブだった。


LAMAの楽曲は3分前後の明るい曲調のポップスが多いイメージがあるけれど、『In The Darkness』や『Blind Mind』ではナカコーのソロ・プロジェクトであるiLLに通じるダークサイドの要素も見せ、多様なメンバーそれぞれのバックグラウンドがLAMAというバンドに反映されていることを印象付けた。ミニマル・テクノを取り入れた『Domino』から『In The Darkness』、そして『Blind Mind』の流れは、電子音楽と生バンドの共存のあり方という意味において、この日のライブの中で重要なポイントだと感じた。

『Domino』はLAMAの楽曲の中でも特に電子音楽寄りであり、ライブで実際に演奏したことにも驚いたが、この曲がライブの流れの節目となり、重要な役割を果たしていた。『In The Darkness』も『Blind Mind』も、ディープな嗜好を持つナカコーと牛尾くんが作ったクールな電子音楽がベースになっているけれど、そこにひさ子ちゃんの叙情的なギターのリフが重なることで楽曲全体が熱を帯びる。『Blind Mind』は、ナカコーの艶と憂いを秘めたヴォーカルの魅力が最も表れている曲でもあり、ひさ子ちゃんのギターリフとナカコーの感情的なヴォーカルが互いに反応し合う形となり、会場全体も熱気に包まれた。この日のハイライトの一つだった。


後半で披露した『D.B.A』のイントロでは、打ち込み音の音量が最大になり、強烈なライトが点滅する演出で、その様子はクラブイベントそのものだった。この日のライブは19時スタートだったけれど、エレグラのようなオールナイト・イベントに来ているかのような感覚に陥った。ちなみに、この日のVJや演出は注目を集める映像作家の細金卓矢氏が担当していたとのこと。


その後に披露した『Parallel Sign』から『Know Your Lights』の流れは、ファンの期待に真正面から応えるもので、熱気を最高に上げてからの、物語のエンディングを感じさせる『Life』への流れがとても美しかった。『Life』はモコモコとした不思議な音のテクスチャーが背景に横たわっている楽曲で、ステージを照らすドットのライトがその音のテクスチャーを視覚化していた。ここでもひさ子ちゃんの感情に訴えかけてくるギターのリフがこの楽曲のキーとなっていた。


アンコールはなんと2回。2回目のアンコールで披露した『Cupid』は、そのピュアな初々しさ、フレッシュさを感じさせる点でLAMAの楽曲の中でも群を抜いていて、ポップソングとして珠玉のナンバーであることを改めて実感。

マニアックな電子音楽がベースにありながらも、あくまでも最終的には幅広いリスナーに届くポップソングとして奏でることを目指す。『Cupid』からは、そうしたLAMAの基本姿勢が伝わってきた。

アンコールラストの『Dreamin'』では、メンバーそれぞれが楽器にエフェクトをかけ、実験的なノイズをかき鳴らし続けた。


ポップソングもノイズもエレクトロもやる。そういう柔軟さ、不確定さが、このバンドのおもしろいところで、それはメンバーそれぞれが別の活動場所を持っているからこそ可能なことでもある。そして、LAMAは新しいことを取り入れる実験精神と、ポップスとして仕上げるという姿勢のバランスが絶妙であるからこそ、多くの新たなファンを獲得しているのだろう。

これからは、こういった形を取るプロジェクトやバンドがより一般的な存在になってくるように思う。それぞれが元々持っている自身の強み、独自性を発揮してるのだけれど、LAMAという一つのバンドになったときに、新しいものが生まれる。

このLAMAに触発されて、新しいおもしろいプロジェクトが生まれてくるといい。