2010/06/13

驚きの連続~女性陶芸家 Lucie Lie~ 

現在、六本木の新国立美術館で女性陶芸家、Lucie Lieの回顧展が行われていて、先週行ってきました。

Lucie Lieを知ったのはついここ最近。
知り合い人の奥さんが陶芸好きな方で、伝え聞きでLucie Lieのことを知りました。
4月に新国立美術館にルノアール展を観に行ったときに今回のパンフレットを見たのだけど、その瞬間に「恋に落ちた」と言っていいほどの、鮮烈なインパクトを受けた。

今までイメージしてた陶芸とは全くかけ離れた、斬新で大胆なデザイン。

 ということで、楽しみで仕方なかったこの陶芸展。
予想より遥かに心打たれる作品の数々が展示されていました。

1902年にウィーンの裕福なユダヤ人家庭に生まれたルーシー。
展覧会ではルーシーの幼き頃の写真や旅行先の写真、自宅の写真などがいくつも紹介されていた。
お父さんはお医者様、お母さんは名家の出身という家庭で、ルーシーは紛れもないお嬢様だったよう。
レースのドレスを着た幼い頃のルーシーはとてもかわいい。

リー夫妻の自宅の写真もあったけれど、ソファーや書斎など、部屋の写真もとても絵になる。
「エルンスト・プリシュケによる時代の最先端のもの」 らしく、まさに「都市に生きる芸術家」だったルーシー。
この人自体がカリスマ性を持っていて、女優さんのようでした。

展示品の中には数々の釉薬ノートがあったのだけど、薬の調合の比率がびっしりと細かく書かれていて、陶芸には化学的な知識も必要なんだと知った。
お父さんはお医者様、化学的、理系的な環境の中で育ったルーシーにとって、釉薬の実験を繰り返し行う陶芸家という生き方は、天命だったようにも思われた。

また、ルーシーは物理学者とも交友が深く、最先端の物理学の知識にも触れていたそう。
購入した図録には、このような物理学や科学、そしてウィーンという都会が持つモダニズムの思想がルーシーの作品に深い影響を与えていると解説されています。

釉薬ノートを見ているだけで、ルーシーの頭脳明晰さと陶芸へのひたむきな情熱が感じられました。

 全部で250点が展示されていて、一つ一つがまさに「驚きの連続」。

そんな中でも特に印象に残ったものを紹介。

ちなみに写真は、今回の展覧会で販売されていた図録を購入して撮ったものです。



5. 鉢 1926年

この色合い、この形!
5分ぐらい眺めていました。
素敵すぎます。



 R-19 ウェッジウッド社のためのカップとソーサー(プロトタイプ) 1963年

ウェッジウッドがジャスパーウェアという拓器のシリーズの新しいティー・セットとコーヒー・セットのデザインをルーシーに依頼して、デザインされたもの。
けれど、ウェッジウッド社はこのシリーズには同社には適さないと判断したため、商品化には至らなかったとのこと。

こんなカップで朝にコーヒーを飲めたらどんなに素敵なんだろう。
私は写真真ん中のデザインに一目惚れ。



88 白釉花器 1964年頃

凛とした佇まい。
ルーシーの人柄がそのまま器に表れているように感じた。
この作品も5分ぐらい眺めていました。
それぐらい惹きこまれます。



108 熔岩釉鉢 1968年頃

写真ではわかりにくいのですが、無数の泡のような穴が表面にあって、独特の作品。
こ れがルーシーの生み出した最も特徴的な釉薬のひとつだそう。
抹茶色がなんとなくおいしそう。



113 黄釉線文鉢 1968年頃

この鮮やかな黄色もルーシーの特許と言っていいでしょう。
そしてこの曲線のラインがさらにオリジナリティーを与えてます。

写真ではわかりずらいですが、茶色の部分には細かな線が刻まれていて、「掻き落とし」という技法が用いられています。これもルーシーの作品の特徴。




147 ピンク線文鉢 1974年頃
148 ピンク線文鉢 1974年頃
152 ピンク線文鉢 1975年頃

後期の作品にはピンク色をした作品が多数あります。
このピンク色が本当に優しくて上品でかわいらしい。
ピンク色にそれほど愛着がない私でも、ルーシーの作り出したピンク色にはすっかり心奪われました。



160 ピンク線文鉢 1978年
171 ピンク線文鉢 1970年代後半

このピンクとターコイズブルーの組み合わせ!
この色合いには本当に感動しました。



159 青釉鉢

ルーシーの代表作。
私はこの作品が一番好きです。
イメージするルーシーさんは、こんな色です。



161 スパイラル文花器

写真ではあんまりパっとしないけど、実物を見ると惹きこまれます。
これも泡のような無数の穴が表面にあって、優しいピンクと水色と茶色が溶け合っていて、うっとりしてしまいました。


169 熔岩釉大鉢(マーブル) 1979年頃
194 熔岩釉大鉢(マーブル) 1985年頃

この熔岩釉と呼ばれる技法もルーシーが研究を重ねて作り上げたもの。
下の作品はクレーターのように、ごつごつしてます。
釉薬の中に混ざった不純物によってガスを発生させるらしい。


ルーシーの言葉で胸に刺さったものがあります。

「陶芸はいつも私の心のなかにあります。
ヒトラーや難民問題やお金を稼ぐ必要以上に重要なものがあるのだと。」

「陶器の制作は私にとって冒険である。新しい制作はすべて新たな始まりである」


今後は大阪など、日本各地で展覧会が開かれるようなので、興味があれば足を運んでみては。

ハっとする驚きを感じられると思います。

http://www.lucie-rie.jp/


4 件のコメント:

  1. 私も今週末行こうと思ってるんだよね。
    楽しみ~☆

    ブログ始めたんだね。

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  2. ルーシーリーの作品凄く惹かれますね。
    奥さんの影響で北欧の食器類に始まり、各地で色々見てきました。
    ルーシーリーのことは今回ブログで写真見たけど凄く良いですね。
    僕が好きなターコイズブルーが素敵です。
    今日、嫁さんが「冬に大阪でルーシーの展示会があるから、冬に大阪旅行決定」と勝手に決めてました・・・

    ヒデアキ@クマモト

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  3. >akiho

    今コメント見たー!
    今週末行った??
    私、土曜日に新国立美術館にオルセー美術館展行ってきたよ!
    もしかしたらすれ違ってたりしたかな?

    ルーシー・リー好きやったんやね
    また近いうちに会いましょう☆

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  4. >ヒデアキさん

    そうなんですね~
    大阪には冬やってくるんですね。

    いいですね。
    ぜひぜひ奥さんとルーシー・リーと大阪を満喫して下さい。

    ターコイズブルーも他の色も、本当に惹かれますよ!

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